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には、?港湾施設を初めとする水際線の結節点の損壊、?後背地へのアクセス道路の損壊、がその主なものであり、間接的理由としては、?被災者が被災地から離れることを嫌った、?海に避難する、船を利用するという発想が基本的になかった、が最も重要であると考えられる。

3. 沿岸域災害救援における海・陸の連携

3.1 船舶の機能の活用

船舶の持つ機能が多様性に富んでいることは既に述べた。この機能は海上輸送に携わる者には平生から活用されているが、沿岸域の災害時にも津波の心配がない限り通常通り活用できる。Fig.1は、船舶の持つ機能と災害時に活用が期待される方向を示したものである。

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Fig.1 Diverse functions of ships and prospective duties for disaster relief

船舶固有の機能はこれだけではなく、中にはかなり広い甲板を有するものもある。救難・消火に必要となるヘリコプターのヘリポートとしての活用等も考える必要がある。また、災害時の救助・救援専用船としてではなく、平常時にも活用できる船であることが望まれる。

3.2 緊急時の海上交通・輸送ルート、結節点の確保

阪神・淡路大震災時の船舶による代替輸送は民間会社によって臨時航路が開設され、その実績はTable2,3に示される通りであるが、緊急時の運航体制が整備されてい

なかったため、必ずしも十分な成果を上げるには至っていない。この理由として、?料金の設定と赤字補填の問題、?利用者数の推定困難、?投入可能船舶の問題、?船舶設備と港湾設備との不適合、?代替港湾設備の不足、?陸上ルートの損壊、?法制度、?危機管理体制の整備の遅れ、等が挙げられる。

これらの全てが今後の課題として残されている状態であるが、臨海都市域における交通・輸送体系を整備するに当たって、特に、陸上ルートと海上ルートの結節部にはハード、ソフト両面からフェイルセーフあるいは冗長性をもたせる必要がある。

3.3 海上支援のコンセプト

災害発生時の海上支援活動を発生するニーズ、その期間、活用可能船舶の観点から大きく分類するとTable 5のように表される。

発生ニーズ 期間 利用可能船舶・船艇
救助・消火 〜一週間 交通艇、消防艇、高速艇
医療 〜1ヶ月 病院船、交通艇、高速艇
生活支援 〜半年 フェリー、交通艇、高速艇、客船、レストラン船
交通・運送 〜2ヶ月 フェリー、客船、高速艇
スペースの提供 半年〜一年 フェリー、客船、見本市船
復旧・復興 一年以上 作業船、輸送船

Table 5 Outbreak and duration of urgent needs and available ships for rescue and relief

表より、初動救援活動には小型船舶の活用が効果を発揮でき争ことがわかる。これは、小型船を利用する場合には、?震災による港湾施設の損壊の影響を受けにくい、?高速・機動性、?少人数による出動意志の決定可能、?同時に多数の舟艇を投入可能、?機能の多様性、?陸路の代替が可能、等であるが、このような活用方法を成功させるためには、「海、運河、水路から(へ)のアプローチ」が基本である。従って、(1)小型船舶の利用可能な水際線の整備、(2)緊急時における港湾、水際線の使用およびアクセス手段の整備、が必要であり、同時に(3)災害時には津波の危険がなければ海へ避難の発想が平常時から市民に定着している必要がある。また、この度の震災ではあまり利用されなかったが、宿泊、衛生管理、福祉等の市民生活支援のための施設としての船舶の活用に関しても、利用体制の整備はもちろん、平生から市民感情の中に親水性を浸透・定着させる、港湾、船に対する認識を定着させる等の努力が必要である。

また震災時でも、船舶上では通常は通信設備の損壊はないので、情報・指令中枢としての活用が期待できる。

 

 

 

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